かめんやさん 文 まきうちれいみ 絵 ひだかきょうこ 出版 文芸社

森の奥でひっそりと営業しているかめんやさんには、たくさんの仮面が並んでいます。
他の顔になりたい動物たち、シャム猫みたいな派手な顔に憧れる地味なうさぎ、ライオンのように強そうな顔になりたいネズミ、子どもをあやすために羊みたいな優しい顔になりたいクマ。
たくさんの動物達が自分を偽るための仮面を求めてやってきます。
そんなかめんやさんに、嵐の夜に現れたオオカミは、警察犬から逃げるために店主のかめんを奪い取り、店主になりすまして逃げようとしますが・・・

暑い夏にぴったりのとってもホラーな話です(最近涼しいんですけどね・・・)

今月号のMoeが怖い絵本特集で、これも載ってるかなーと思ったけども載っていませんでした。すっごいこわいのに。

ランキングの1位は表紙の「モチモチの木」でした。表紙は怖いっちゃー怖いけど、基本的には優しい話ですよね。

「ひろしまのピカ」もランクインしてましたが、これは別次元で怖いというか、夏休みはとっても嬉しいけど、登校日が怖くて仕方ないという小学校時代のトラウマを思い出しました。大体8月6日が登校日で、毎年原爆の映画を見せられていました。今はどうなのかな?

「三びきのやぎのがらがらどん」のランクインも怖い本としては意外!と思ったけども、うーん、たしかに怖いわ、怖いというよりも、乱暴というか。現れたトロルをヤギが目玉を角で串刺しにして、肉も骨も木っ端微塵にしてぶっ殺すという衝撃的なところは、今の時代に発刊されたら問題になるんじゃないかというレベル。たしかに怖いわ。

そして、この「かめんやさん」。めちゃめちゃ怖いです。
星新一のブラックな結末のショートショートを読んでいるような感じです。

仮面で見た目を変えたところで、根本的な問題は解決しない。
猫の仮面をかぶったうさぎは入り切らない耳が痛くなり、羊の仮面で子供をあやしたクマは、次は羊を親と思い込む子供に悩むようになります。

銀色の毛並みに騙された!と怒鳴り込んできたキツネは、本当は自分は見た目ではなく中身に魅力を感じていたということに気付かされ、仲直りをして帰ってきます。
見た目が問題じゃない、中身が大事なんだ!と気づいたところで終わってくれればいい話で終わるんです。とってもいい話で。

しかし、そんなお店に警察犬に追われたオオカミが飛び込んできて逃走のために店主の仮面を奪い取ります。
でも、奪い取った仮面はつけたら外せない呪いの仮面。そんなこんなで結局誰も幸せになれない鬱展開。

全く子供向けではありません。二段オチみたなもので、途中までいい話っぽいので油断をするもんだから余計に怖いです。

天気予報では、雨が過ぎたらまた真夏の暑さが戻ってくるそうです。暑くて寝られない夜に、読んだら涼しくなるんじゃないでしょうか? 怖くて眠れなくなっても知りませんけどね笑。

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