森のイスくん 作 石井聖岳 出版 ゴブリン書房

深い深い森の奥に、イスがひとつありました。誰がここに置いたのか、なんのためにここにあるのか、誰も知りません。森の動物達がどこから来たのか聞いても「くふふ」と笑うだけ。そんな謎のイスくんと森の動物達の不思議なお話。

古本屋さんで置いてあるのを見つけて、一目惚れして即買い。
もちろん記念品ではないことはしっかり確認して買いました。

人工物のないような森の奥深くに、イスがぽつんと登場します。

誰がなんのために置いたのか、どこからやってきたのかわからない上に、イスくんは「くふふ」と笑い、その上物知りでいろんなことを知っています。

イスが何モノなのかというのは明かされることなく、動物たちも不思議に思いつつもイスくんを受け入れています。

基本的にオチがしっかりしているお話が好きなもので、こういう不思議なことが何もわからないままふわっと終わってしまうヘンテコなお話というのは、あまり好きではないんですが、イスくんのなんとも言えない表情と「くふふ」という謎の笑い声が気に入りました。
しかも、なんか変な角刈り?なんですよね、イスなのに。謎。

森の動物達も、イスくんの植物や雲の知識から、植物博士のイスじゃないかとか、飛行機のイスじゃないかとかいろいろと想像していますが、一体何のためにここにいるのか、どこから来たのか、いろいろと想像を膨らまえてみるのも楽しいでしょうね。

絵本のよみきかせの仕方みたいな本を見ると、「よみきかせの後に感想を聞くのはNG」みたいなことが書かれています。

子供たちの心の中には、絵本の世界が広がっているところなので、そっとしておきましょうみたいな論調で語られている事が多いです。

でも、この手の絵本は、なんでだろう?ということを一緒に考えるべきだと思うんですよね。想像力が広がっているところを更に手助けしてあげるように。

自分のやってるスタイルだと、ちょっと手が回らなくなりそうなので難しいでしょうが、もっと少人数を相手にするときなんかは、不思議な世界への想像を膨らませていくのが楽しそうな気がします。
それに、そもそも作者の意図というのは、そういうところにあると思うんですよね。なんだろうね?不思議だねという気持ちから想像力をどんどんふくらませたいということを作者が期待しているのであれば、セオリーがなんだろうが、そちらを優先させるべきですから。

不思議なことは不思議なままがいいのかもしれませんね、真実は意外につまらなかったりしますから(笑)。

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