もうぬげない 作 ヨシタケシンスケ 出版 ブロンズ新社
ぼくのふくがひっかかってぬげなくなって もうどのくらいたったのかしら?
「じぶんでぬぐ!」と言って服を脱ごうとしたら引っかかって脱げなくなってしまった僕。
どうやっても脱げないものだから、大人になっても脱げなかったどうしようと、脱げないままの未来を想像したりするうちに、そうだ!服が脱げないんだったら、先にズボンを脱げばいいんじゃないか!とズボンを脱いでしまったものだから、更に事態は悪化して・・・
絵本が好きって人、特に大人で絵本が好きな人だったらお馴染みだと思います、ヨシタケシンスケさん。
子供も読んで面白いのですが、大人が読んでも面白いです。
「ふくがぬげなくたって えらくなったひとは たくさんいるさ」
服が脱げない格好のままで、大観衆の前で演説しているシーンで、いやいや、そんなのおかしいでしょ~と、そんな人なんているわけないよと子供は笑うシーンなんですが、その次に書いてある
「だって、ふくがひっかかってるだけで、ほかのひととなんにもかわらないんだから」
という言葉にハッとします。
服が脱げないことを嘆くんじゃなくって、「それでもいいじゃん」って包み込んでくれる包容力とでもいうのでしょうか。
服がひっかかって脱げないことはものすごく重大なことのように見えるのですが、ひっかかってる「だけ」、大したことないじゃんって考えられたら、それはそれでいろんなことがラクになるような気がします。
ちょうど、audibleで聞いていた吉田修一の「横道世之介」にこんなシーンがありました。
主人公の世之介に、友人の加藤が実は自分がゲイであることを告白します。「気まずいんだったらもううちに来なくてもいいから」と言う加藤に「え?行っちゃ駄目なの?」と全く意に介さない世之介。
加藤としては、すごく重大なことを、友情が壊れることを心配しながら真実を告白したつもりだったが拍子抜けだったわけですが、このおおらかさに救われたと、心のなかでは思ってたんじゃないかな?
なんてあまり難しいことを考えて読まなくても面白いです。
服が脱げない上にズボンを脱いでしまって、お腹丸出しのパンツ丸出しで、更に身動きが取れなくなったままでお風呂に連行されるところがオチなわけですが、その後、お風呂上がりにパジャマを着るところで、さらなる二段オチが用意されています。ここには思わず「うまい!」と思っちゃいます。
ヨシタケさんの絵本読んだことのない方には、まず最初に読むのをおすすめしたい一冊です、おすすめ!