でんせつのきょだいあんまんをはこべ  作 サトシン 絵 よしながこうたく

空から落ちてきた巨大な物体。それは「伝説の巨大あんまん」。
あんまんをそのまま運ぶ、実現不可能だと思われたプロジェクトに、立ち上がった男(蟻)たちがいた。
男(蟻)たちはその力を結集し、多大な犠牲を払いながらも不可能を可能にするために、伝説の巨大あんまんに挑む。

「うんこ!」のサトシンさんと「給食番長」シリーズのよしながこうたくさんの作品です。

こんな暑い中だというのに、コンビニには、にくまん、あんまんが並び始めましたね。なんという季節外れ!と思ったところでこの本を思い出しました。

主人公の蟻たちは、太い眉、でかい口、筋肉質の体。伊藤英明のデ・オウのCMみたいです。男臭くて臭ってきそう笑。
そして、ところどころに「プロジェクトX」へのオマージュが散りばめられています。読んでいるうちに、頭の中には中島みゆきの「地上の星」がBGMでかかってきます。
コロを使ってあんまんを引っ張って運ぶ様子は、まるでピラミッドの建設現場だなと思ったら、裏表紙にはエジプトのヒエログラフ的な象形文字が描かれています、芸が細かい!

こういう濃い絵は、好き嫌いがわかれそうですが、好きな人はめちゃめちゃ好きそう、そして僕は大好きです。

最後の盛大なオチは、なんとなく途中から気がつくかもしれません。
だって、あんまんをよく見ると、どうもあんまんじゃない・・・表面のヒダの感じはどう見ても◯◯まんなんですもの・・・

でも、さらなるオチが、本編ではなく、あとがきに書かれています。

実際の働きアリはメスなんだけど、別の世界って設定ですべてオスにしました

そうか、ハチもそうですもんね、働き蜂はみんなメス、アリだってそうなのかと勉強になります。
あとがきというよりも、作者からのメッセージとして、最後のページの続きに書かれています。
言わなかったら誰もツッコまないところでしょうが、子供に正しい知識を、という配慮をしっかりオチとして使うところがさすがサトシンさんです。すばらしい。

先日の講演会での話ですが、ワークショップでの、絵本の選び方の話題がでてきました。
ダイナミックなわかりやすいものと、描き込みの細かいもので、大人数向けか、少人数でじっくりに向いているのか変わってくるという話題がありました。
でも、最近の作品はハイブリッドとでもいうのでしょうか、このどちらにも対応できるものが多いです。この作品も、大人数向けのダイナミックな絵柄なように見えるのですが、よく見ると書き込みがみっちりされているので、じっくり読んでも面白いんです。

主な登場人物、といっても名前がついているのは、勇者アリヤマ・アリロウ、アリの巣で一番の知恵者アリレオ・アリレイ、長老、女王しかいないのですが、多くのページに小さいながらも、これだ!とわかるようにしっかり描き込まれてます。
少し離れて見るような読み聞かせでは見ていても絶対わかりませんが、じっくり見るとわかります。ぜひ手にとって読んでみてください。

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