「の」 作 junaida 出版 福音館書店
「の」で終わり、「の」から始まる物語。
「の」という文字の不思議な力は、「わたし」と「コート」をつなぎ、「ポケット」と「お城」、「シーツ」と「船乗り」、「美術館」と「魔女」、いろんなものをつなぎながらどんどん世界を広がっていく。
果てしなく広い世界への旅は、「の」の字を描くように、再び「わたし」につながっていく。
あんまり芸術芸術した絵本というのは苦手で、これもその手の感じだろうと思って避けてました。
先日、「街どろぼう」を買って
内容もおもしろかったですが、装丁が大変素敵だったので、それならば、と「の」も買ってみたわけです。
税込み2,200円。絵本ってだいたい1,500円くらいが平均でしょうか?
2,000円超える値段ってのはそうそう無いと思う。
うわ、高っか!と思ったんですが、装丁の手が込んでいて
わかりますでしょうか? 金の箔押しです。
表表紙と背表紙の二箇所だけ金文字です。
ちなみに、「街どろぼう」は、なんと表紙が布張り! 同じく金文字もつかってて、なんだか昔の製本した卒論を思い出します。
ページ数も多くって78ページ、通常の絵本が30ページ~40ページなので、ほぼ二倍です。
コストパフォーマンスって言葉を使ってしまうと、そもそも絵本なんて買えないんですが、多くの絵本が30ページくらいで1500円だとしたら、70ページ超で2200円ならコスパがいい!ということになるんでしょうか笑。
少なくとも読んでみると、こりゃこの値段でも仕方ないってなることでしょう。
「わたしの」
「お気に入りのコートの」
「ポケットの中のお城の」
「一番上の眺めの良い部屋の」
「王様のキングサイズのベッドの」
と、「の」によって繋がれた世界はどんどんどんどん広がっていくんですが、その言葉の一つ一つに対する絵の書き込みも細かくって、「眺めの良い部屋」の絵の中にはちっさく王様のベッドが描かれていたりするものですから、「の」でつながった世界を行ったり来たりしながら読みすすめることになります。
「の」は私と世界をつないで、遠くに連れていくんですが、ラストでまた「わたし」に戻ってくるところなんかは、「の」の字を象徴しているのでしょうか。とっても素敵な終わり方で、また最初から読みたくなります。
本棚においておきたい、好きな時に読み返したいなんて、手元においておきたいって思う一冊です。図書館で借りるよりも、ぜひ一冊買っちゃうのをおすすめ、ちょっと高いけどね。