おかあちゃんがつくったる 作 長谷川義史 出版 講談社
ぼくがほしい!というものは「おかあちゃん、なんでもつくれるねん」となんでもつくってくれるおかあちゃん。ジーパンに体操服やトートバッグを作ってくれる、でもどこかちょっとかっこ悪い。ある日、亡くなったお父ちゃんの代わりに父親参観に来ようとするおかあちゃんに「なんでもつくれるならお父ちゃんつくってえな」と思ってもないことを言ってしまって・・・
作者の長谷川義史さんの子供の時の思い出を描いた作品だそうです。
病気でなくなったお父ちゃんの代わりに、ミシンの仕事をしながら、女手一つで子供を育てているお母ちゃん。
ほしいというものを、なんでもつくっちゃうのは、買ってあげられないけどなんとかしてあげたいという苦肉の策なんでしょうね。
似たようなものでなんとかしようとするもんだから、剣道の袴っぽいジーパンになっちゃったり、サラリーマンっぽい体操服になっちゃったり。
でも、そんな切なさを笑い飛ばしちゃうような、そんなパワフルな浪速のオカンというイメージが伝わってきます。
今の時代だと、ハンドメイドっていったら圧倒的に趣味の世界です。買ったら高いから作るのではなくって、気に入ったものを作りたいから、こだわって作りたいから自分で作るわけで、貧乏で高くて買えないから自分で作るなんて人はきっともういないでしょう。
昭和40年代くらいの感じでしょうか? 今の子供、というか親だって生まれてないか・・・おじいちゃんおばあちゃんの世代の話って感じになるのか。子供にはこの感覚というのはちょっとわからないかもしれませんね。まぁ、ハンドメイド作品のセンスが悪いおかあちゃんというのは今でもたくさんいるんでしょうが。
そんなわけなので、あまり小さい子供には理解が難しいかと思いますが、大人にはしっかり響くお話だと思います。
「こんでもええ」と言われた父親参観に、他のお父さんたちと同じような背広を着込んでしれっと教室の後ろに立っていたおかあちゃん。見つけてびっくりしているぼくの耳元でささやく言葉に笑って泣けちゃいます。ぜひ、これは作品で読んでみて下さい。