街どろぼう 作 junaida 出版 福音館書店

大きな山のてっぺんに一人で暮らしていた巨人は、さみしくなってふもとの街からいっけんの家をこっそりもちかえってきます。住民が寂しがるので一軒、また一軒と持ち帰り、ついには街がまるごと山のてっぺんにできあがりました。

以前に同じjunaidaさんの「の」を紹介しましたが、金文字が押してあって、大変手の込んだ作りにびっくりしたのですが、こちらもまた手が込んでいます。

布張りの金文字、大学の卒業論文の製本ってこんな感じだったような記憶です(そういえばどこにあるんだろう?)。これが自費出版で少数だけ作った作品というわけではなく、普通に書店に並んでいるというのにはちょっとびっくりします。

これはデジタル化されたらこの魅力は1%も伝わらないですし、リアルの本を所有したいという欲を掻き立てられる本を作るというのは今の時代だからこその戦略なんでしょうね。
ぜひ手にとってじっくりと見てほしい作品です。

巨人は寂しくて街を根こそぎ持ってきたものの、いくら周りが賑やかになっても心は満たされない。飲み会で周りが盛り上がっている中で、自分がなんだかぽつんと一人になってしまったような感じ。飲みすぎた振りして何度もトイレに立ってみたり、スマートフォンをいじったり、あれ、なんで自分はここにいるんだっけ?と思ったりする経験がある方もいるんじゃないでしょうか?

童謡の「一年生になったら」で「友達百人できるかな」の言葉は、未来への希望なんだろうけど、思ったように友達ができなかった人には呪いの言葉にもなりますよね。
街を出た巨人は、その先で心を通わせられる友人を見つけることができます。
友達はたくさん作らないとだめって刷り込まれてて、友達がたくさんいる人がすごく羨ましく思えちゃうんだけど、別に友達100人つくらなくたっていいじゃん、仲良しが1人いれば大丈夫だよって思ったら気が楽になります。

自分勝手に街を根こそぎ移動させておいて、気に入らないから結局自分は出ていく、ということについては、ちょっとどうかなと思わなくもないですが。まぁ、それはそれ。そこは気にしないでおきましょう笑。

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