もうじゅう はらへり くま 作 塚本やすし ポプラ社

がおーー!うぉーー! もうじゅうはらへりくまが山からすごい勢いで山から街へおりてきた。民家の庭先にはのんびりとお茶をすするおじいさんに迫りくるはらへりくま、おじいさんがあぶない!!と思いきや・・・

この本のタイトル「もうじゅうはらへりぐま」かと思ったら「もうじゅうはらへりくま」でした。「ぐま」じゃなくて「くま」です。

日本語のシステムとして「連濁」というのがありまして、2つの単語がくっついて一つになるときには、後ろの単語の語頭が濁ります。

たとえば、話の中に「くまばち」がでてきますが、「熊+蜂」で「くまばち」になります。

ホッキョクグマやツキノワグマもそうですし、人食い熊なら「ひとくいぐま」です(シロクマはちがうのはなぜだろう?)。
腹が減った熊ならば、ハラヘリグマとなるのが一般的な日本語のルールのような気がします。

濁音が入るとなんだか強そうになるっていいますよね。
ゴジラ、ガンダム、ドラゴンズ、どれも強そうな気がします(強そうなだけかもしれませんが)。

登場する「はらへりくま」実は、ちっちゃな子グマなんです。凶暴な熊が襲いかかるように描かれていますが、小動物サイズのかわいい子グマがお腹が減って山を駆け下りてきているだけで、おじいさんにどんぐりをたくさんもらって喜んで帰っていきます。

物語の展開的にちょっと読者を騙すような書き方になっているので、タイトルでヒントを出しているのかな?という気もします。強そうな「ぐま」ではなく、かわいい「くま」だよって。考えすぎだろうか?

それにしても、山から降りてきたのがかわいらしい子グマでよかった。おじいさんも、これも人間のせいだとどんぐりを持たせて帰すくらいですみましたが、成獣だったら大変なことになるところでした。

山を開発した結果、どんぐりの生える雑木林がなくなってしまって、里に熊がおりてくるというのは、山の近くのまちではよくあることです。実際、うちの市内(恵那市)でも、熊の目撃情報は頻発してまして、今月は2回、先月なんて6回も目撃情報のメールが市から届きます。

町中にクマが現れたら一方的に駆除の対象になってしまいますが、人間だってクマだって静かに暮らせればそれに越したことはないはずです。そもそも何が問題なのかっていう環境の問題を考えるきっかけにもいいかもしれません。

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