オニのサラリーマン 文 富安陽子 絵 大島妙子

「わし、オニでんねん、すんまへん」オニのサラリーマン、オニガワラ・ケンは、今日もスーツに着替えてネクタイを締めて、満員バスでご出勤。地獄で働いて、ミスして叱られて、おでん屋でいっぱい引っ掛けて帰ります。

大道芸人なんて気楽でいいね、と思われるかもしれませんが、これがまた色々と大変な職業です。

毎日決まったところに出勤する必要はないのですが、放って置いても仕事が入ってくるわけではありません。サボろうと思えばいくらでもサボれますが、仕事が入ってこなかったらお金も入ってくることはありません。働かざるもの食うべからずじゃなくて、シンプルに「働かざれば食えず」なわけです。更にコロナ禍のこの3年ほどはとんでもなく大変な状況でした。

今の自分に満足して、そこにあぐらをかいてしまうとそこで進歩は止まってしまうものですから、つねに自己研鑽は続けていかないといけない。油断をするとあっさりと足元をすくわれます。

公務員だった頃は、たしかに安定的に収入もありますし、よほどのヘマをふまなければ給料を減らされるようなこともありません。しかし、どこの部署に異動になるかによって仕事の内容も全然違ってきますし、当然忙しさも天と地ほど違いますし、更に仕事に対するやり甲斐も違ってしまいます。

数年ごとに部署をコロコロと異動させられるのは、不正防止だったり、様々な経験を積ませるなどいくつか理由はあると思うんですが、自分はこれで市民の役に立ちたい!と思っていてもあっさり異動させられたりするのでがっかりします。

そんなわけで、どんな仕事にも、大変なことはいくつもあるもんです。

「鬼」というのが職業としてなのかどうなのか思ってもいませんでしたが、「地獄」というシステムが閻魔大王の下で運用されているということだとすると、その手先となって働く「鬼」というのは、趣味というわけでもなければ、職業として働いているということなのでしょう。

そうなれば、24時間常に働いてるのは大変でしょうからきっとシフトを組んでいるんでしょう。作品の中でも閻魔大王が見張りの割り振りをしていますが、きっとシフトを組むのも大変で、ブツブツ文句を言いながらシフトを組んでたりするんじゃないだろうかとか、書かれていないところまでいろいろと妄想したくなってきます。

サラリーマンということだとすると給料制なんでしょうが、そのお金は一体どこからでてきているのでしょうか? いや、地獄に落ちるような人は、生前はあくどい手を使って金儲けをしていたということなら、そこからむしり取っているんでしょうか? 謎は深まります。

鬼も人間も同じようなことで苦労してるんだなと思うと、鬼にもなんだか親近感を感じます。はたしてそれがいいことなのかどうなのかわかりませんが笑

鬼が関西弁なのがまたいい感じなんですが、よみきかせしようと思うと、関西人以外はなかなか難しいんですよね。自分が読むとエセ関西弁になってしまいます。こういうのを関西弁でばしっと読めるといいんだけどなーと、いつも思います。

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