花さき山 作 斎藤隆介 絵 滝平二郎 出版 岩崎書店
山菜を取りいって道に迷ったあやは、うつくしい花畑で山ンばに出会います。
山ンばはあやに、花さき山に美しい花が咲くのは「つらいのを辛抱して、自分のことより人のことを思って、涙をいっぱいためて辛抱すると、その優しさとけなげさが、こうして花になって咲く」のだと教えます。そしてそこには、妹のために辛抱した昨日の自分が咲かせた花も美しく咲いていました・・・
滝平二郎さん(たき ひらじろうではなく、たきだいら じろうです)の切り絵、子供にはちょっと怖い雰囲気もありますし、怖い話かと思って敬遠していた方もいるんじゃないかと思います。
「花さき山」「半日村」「モチモチの木」どれもそうですが、表紙がこの雰囲気ですから、「怖い」「暗い」「重い」みたいな印象があります。
しかも、この「花さき山」は冒頭からいきなりやまんばが登場しますからね、この絵柄で恐ろしいやまんばが登場した時点で子供にとっては恐怖でしかないかもしれません。
でも、とっても優しい話なんです。
貧乏な家に生まれたあやは、妹のために、家族のためにといろんなことを辛抱しているんでしょう。辛抱しても誰にも褒めてもらえず、悲しい気持ちをずっと抱えたままだったに違いありません。
そんなあやをやまんばは褒めてくれます。
人に優しくすること、誰にも気づかれないかもしれないけど、神様はきっと見てくれている。
どこかで花を咲かせているんだって思うことができれば、きっと救われるんじゃないでしょうか。
そう思うと、やまんばが神様が姿を変えて現れたみたいなもんだったんでしょうか?
ほんとうに素敵なお話です。表紙で敬遠している方はぜひ読んでみてください。
ちょっと気づいた面白いことなんですが
「やさしいことをすると花が咲く 命をかけてすると山がうまれる」として、「八郎」と「三コ」がでてきますが、そのどちらも、斎藤&滝平コンビで出版されています。
出版年を見ると、「花さき山」が1969年12月、「八郎」1967年11月、「三コ」1969年8月、つまり直前に出版されたっぽいんですよね。
え?宣伝?と思うと、なんというか、こんなに道徳的な素晴らしいお話にそぐわないような、ここでそんな商売っ気がでてくる??という気がしなくもありません。
シリーズ作品の登場人物がこっそりでてきたりすることは現代でもよくありますから(シゲタサヤカさんのコックシリーズとか)そういうもんかもしれませんし、映画で言ったらアベンジャーズみたいなもんかもしれませんね。
そして、こんなものも出てます、知ってますか?
こういうの見ると、商売っ気もあったのかなあという気もします、ほんとのところはどうなんだろ?