えとえとがっせん 作 石黒亜矢子 出版 WAVE出版

威張りくさった十二支の動物たちを懲らしめてやろうと立ち上がったたぬき。仲間の猫や熊や山羊に蛙など、十二支に選ばれなかった動物たちと戦いを挑みます。山の上に呼び出して、始まったのは、ラ、ラップバトル・・・?!

江戸時代の絵巻物?錦絵?みたいな絵柄。
ちょっと古めかしい話なのかと思ったら急にサングラスを掛けて帽子を逆にかぶってラップバトルがはじまったりするものですからぶっとびました。そう思って見てみると、絵巻物風の十二支に対して、山の動物達はなんだかかわいらしく描かれています。

別に知らなくても楽しめることで、この紹介を書くために奥付を見ていて気がついたのですが、この作品は「十二類絵巻」とよばれる室町時代の絵巻物を元に大婆にアレンジして作られたとのことです。

十二類巻物というのは、

十二支の動物たちが歌会を開催。そこに鹿が狸と共に現れ、歌会の判者の役を申し出ます。犬の反対があったりもしますが、鹿は判者となり歌会は行われました。
後日、歌会が再び計画されます。鹿に判者になってもらうよう依頼しますが、鹿は体調不良のためにその依頼を断ります。鹿が十二支たちに頼りにされているのを羨ましく思っていた狸は、変わりに判者の役を申し出るも断られます。
これに怒った狸は、十二支に属さない動物たちを集めて仕返しの合戦をしかけるのでした…。

という物語なんだそうです。

いきなり始まったラップバトルというのも、歌合わせのアレンジということなのでしょう。

歌合わせというのは、与えられたテーマに対して和歌を作る、または詠まれた歌に対する返歌ということで歌を返していきます。五七五七七の和歌のリズムで韻を踏んで、相手の読んだ歌にツッコミを入れたりしながら詠んでいくというのは、まさに現代のラップバトル、フリースタイルラップといえるのではないでしょうか。

すいません、ラップバトルというのが本題というわけではありませんで、そんな口喧嘩から始まった戦いは、互いの肉体を使った、肉弾戦にうつっていきます。

しかし、どう考えたところで、竜を擁する十二支の優位はゆらがないと思いきや、タヌキたちは力を合わせて最強の竜に戦いを挑みます。

元ネタの「十二類絵巻」では、戦いに負けたたぬきは出家することになるのですが、この勝負の結末は、そしてたぬきの運命は・・・ 読んで確認してみてください。これもまたぶっとびますよ。

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