かべのすきま 作 中西翠 絵 澤野秋文 出版 アリス館

一人で留守番する寂しい夜、時計の音が妙に大きく聞こえ、窓の向こうの影が急に気になってくる。こわごわとおしっこに行こうとしたときに見つけた壁から伸びる謎の糸。引っ張ると壁からはがれ、黒くて深い壁の隙間が現れて・・・ その隙間から・・・

隙間なんて普段はなんとも思わないんだけど、寂しい夜なんかに色々想像しちゃうものです。

天井の木目のシミが顔に見えちゃったりするのは、「シュミラクラ現象」や「パレイドリア」と呼ばれる現象だそうです。

お盆にしかいかない田舎のじいちゃんばあちゃん家の天井の、布団をしいて頭になるところの上にちょうどこの顔に見えるような三点のシミがあったりするもんです。いやぁ、こわかったなぁ。

隙間ってのも不安を煽るもので、その微妙な隙間からなにかが覗いて見てるんじゃないか、そこから何かが忍び込んでくるんじゃないか、そんな不安な気持ちになってくるものです。

自分がいたずらして障子に穴を開けたのにも関わらず、その穴が気になる。血走った目が中を覗いているんじゃないかみたいな想像したが最後、怖くて仕方がなくなってしまいます。

夜に一人で留守番をすることになった「ぼく」が見つけてしまった壁の隙間。

薄暗い部屋、ひびく風の音、カチコチと音を立てる柱時計や、タンスの上に並んだ日本人形。壁の隙間の均一ではないざらざらとした感じが、滴る血のような、不気味な印象を高めます。

と、そこまではこれからものすごく怖い話になるんじゃないか、という雰囲気をだしていますが、これがもう出しているだけです。全く怖い話になりません。

細い壁の隙間から登場するのは、派手なアニマル柄の服に身を包んだ3人のおばちゃん。
大阪のおばちゃんとでもいうようなパワフルなおばちゃんたちは、嵐のような勢いで、さんざん喋り、食べ、騒いでおいて、嵐のように去っていきます。

少年の後ろにある3体のトラの置物、壁に飾られた3匹の恐竜が、3人のおばちゃんをイメージしたような配置になっていますが、夢オチなのか?それとも現実なのか?
次は誰が来るのか?という余韻を残したラストになっていますが、次も何かが現れるのでしょうか?

それにしても、大阪のおばちゃんというのは、壁の隙間から現れるものとしては絶妙に怖くないですね。おじさんがでてきたら恐怖ですし、若い人がでてきても怖いな。老婆なんかがでてきたら絶叫モノでしょう。まぁ、実際おばちゃん出てきても怖いんだけど、こんな感じでなんとなく勢いで押されそうですもんね。

めちゃめちゃ怖そうな話をするみたいに煽りながら読んだら落差でめっちゃ盛り上がりそうで、よみきかせにもオススメです。

ちょっと調べてみたんですが、僕が先日購入したのも2019年出版の初版だし、置いてる図書館もちょっと少なめな感じ。おもしろいから人気が出るといいのになー。

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