わたしはあかねこ 作 サトシン 絵 西村敏雄 出版 文溪堂

しろねことくろねこの間にうまれた兄弟の中で、一匹だけうまれた赤い猫。
ミルクを飲んだら白くなるかもしれない。黒い魚をたべたら黒くなるかもしれない。一匹だけ色の違うあかねこのことを、周りは心配して色々してくれるんだけど、でもわたしはこの赤色が好き。とうとうあかねこは家を飛び出して・・・

このあかねこのすごいところは、最初から自分の赤色を気に入ってるところ。

自分が幸せかどうかってことは、どうしても周りと比較してとなりがちですよね。
みんながやってることが正しくって、それとは違っている自分がなんとなく間違っているような気分になってしまう。周りも親切心で、違っていることを直そうとしてくれる。

色が違うことを周りが心配して、違うことがかわいそうなことだと言って直そうとしてくれたら、自分だったら、きっと自分が間違っているんだって思ってしまうに違いない。いや、強いなぁ、すごいなぁ。

周りの意見に左右されず自分を保つというのはなかなか難しいことだと思う。
だからこそ、あかねこは家を飛び出すしかなかったのかな、家を飛び出す以外に認めてもらう(という言い方も難しいのですが)方法はなかったのかなと思うのです。でも、現状はそれしかないからこそ飛び出ていったわけで、価値観を認めてもらうことに難しさを思うと、いろいろと考えさせられます。

この絵本が、ジェンダーやLGBTを考えるためのいい絵本だという評価もあります。

まぁそれはたしかにそうなんだろうなとは思うものの、それはそれで、これはこういう本なんだよという決めつけをされているようで、それもちょっとなんだかなぁと思ったりするんですよね。
そういう目的で読んでもらうということは、それを強要させているような、これを読んだらこう感じなさいということを暗に要求することになるようになるというか。
これもまた価値観の決めつけにつながるよなぁと思うんですよね。

なんというか、そういう余白というか、いろんなことを自由に考えさせられるものの方が面白いと思うんですよ。まぁ、あまり難しいことを考えずに、ぜひ読んでみてください。

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