ぼくはひとりで 作 フン・グエン・クアン、フイン・キム・リエン 訳 はっとりこまこ

ぼくは小舟に乗って、まだ暗いうちに出発する。波に揺られ、投げ飛ばされ、激しい雨の中びしょぬれになりながら。水に沈んだ森を越え、鳥の群れの中を、水牛の群れの中を通って、僕は一人で小舟に乗って進んでいく。

外国の絵本なんですが、どこの国の絵本かわかりますか?

作者の名前を見て気づいたかもしれませんが、ベトナムの絵本です。

ちなみに、グエンというののは、世界でも4番目に多い名前なんですって。ベトナム人の40%がグエンだそうです。→ソース(http://www.theworldgeography.com)

「ベトナムに伝わる民話」みたいな絵本だったらありそうです。海外で伝わる有名な民話の絵本シリーズの中の一冊という感じで、ありそう、というか絶対ありますよね。

これは、2015年にシンガポールの絵本コンテストで大賞を取った作品で、2021年に出版された作品。結構最近の絵本です。

アメリカ、ヨーロッパの作品はいくらでもあるし。韓国の作品も最近良く見るようになった気がします。でもベトナムは初めてです。実際、アマゾンで調べてみても、ベトナムの絵本を日本語訳したものというのは全然みつからないので、ほんとに数少ない中の一冊なんじゃないかと思います。

暗い中を小舟に乗って進む表紙のイラスト。そして、水に沈んだ森の中を進むシーンや、鳥や魚の群れの中を進むシーンなんかは、ゼルダのようなファンタジーな雰囲気が全開です。

この先に、一体どんなファンタジーな大冒険が待っているんだろうと思いきや・・・

そのさきはホントは言いたくない、読んでびっくりしたいと思う方は、ここから先は読まないほうがいいかもしれません。

小舟に乗り、危険を冒してまで目指す先というのは、小学校でした。

雨季のメコンデルタ地域では、メコン川が溢れボートに乗らないと学校にいくことができないそうです。
幸いなことに、まったく予備知識無く読んだので、すっごい衝撃でした。ほんとにどんなファンタジーな話なんだろうと思って読んでいました。

世界には、こんなに苦労して学校に通っている人がいるというのがテーマではあるんでしょうが、それがストレートに全面に出てないのがいいですね。

こんなに大変なんですよというのがテーマだと、全体の雰囲気がネガティブな感じになりそうなものですが、この作品では学校に行くまでの大変な道のりを、大冒険として楽しんでいるような、学校の近づくにつれて友達もだんだん集まっていくところなんかも、友達と一緒だから大変なことでもできるんだ!というような、ポジティブな印象をうけます。

面白いよと紹介するには内容を説明するしかなく、説明しちゃうとこの驚きが半減してしまうわけで、非常に悩ましいですね。このブログの内容を読まずに、更に本の帯や裏表紙の説明を見ないままに読んでくれることを祈ってます。うーん、無理か~笑

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