ほんやねこ 作 石川えりこ 出版 講談社

本屋の猫が窓を締め忘れて散歩にでかけたら、窓から風が入り込み、ピノキオやシンデレラや3びきのこぶたなど、絵本の主人公たちが風に乗って飛ばされてしまいました。そうともしらずに野原で寝転ぶ猫の耳に、助けを呼ぶ声が聞こえてきます。

ピノキオ、シンデレラ、長靴をはいた猫、チルチルミチル、ラプンツェルなど、海外の絵本の有名な主人公たちがたくさん登場します。まさに、絵本界のアベンジャーズといったところでしょうか。

アベンジャーズといえば、アイアンマンやマイティーソー、キャプテン・アメリカなどのそうそうたるメンバーが大活躍するわけですが、それに比べたら絵本の主人公たちは風に吹かれて飛ばされて戻れなくなっちゃうくらいなので、大して活躍するわけではないんですけどね(笑)。

アベンジャーズも、それぞれが主演の映画を見てからのほうが楽しめるといいますが、元ネタの話を知らずに読んでしまうと興味を持てないかもしれませんね。これくらいの世界の名作といわれるような作品ならば、子供でも結構わかるんじゃないでしょうか。白雪姫の魔女が助けられたお礼として「どうぞめしあがれ」と差し出したりんごを、全員が即拒否するというシーンは吹き出しました。コントのネタになりそうです。

それぞれが大活躍をするわけでもないのに、なんでアベンジャーズっぽい感じをうけたかというと、最後の方にある、猫が主人公一同を背中に乗せて、夕暮れの中を歩いていくシーンがあるんですが、それがなんというか無駄にかっこいいんですよね。無駄にというのも変な言い方ですけども、なんか映画のエンディングっぽくて素敵なんです。

黒のペンで緻密に書き込まれた絵に、非常にシンプルな色が塗られています。塗り忘れたの?ってくらいにシンプル。大きな本棚が並ぶ店内のシーンでも、小さな本一冊にしか色が塗られてなかったりして、非常に印象的になってます。だからこそ、夕暮れのシーンが強調されて印象的なんでしょうね。旧ツイッター色の青い鳥もよく目立ってキレイです。

これだけ風に吹かれて飛び出してたら、回収忘れの登場人物もきっといるんじゃないのと思ったら、カバーの袖に赤ずきんがいたりするのが芸が細かいです、戻らなくて大丈夫?

カバーの下も同じデザインかと思ったら真っ赤な別デザインの表紙が飛び出してきたもんですから、これもまた芸が細かい! カバーの表紙も素敵なんですが、中の表紙もシンプルで素敵なのでぜひ見てください。ただし、図書館で借りようとすると、カバーはテープで止められて見えないと思うので、買った人だけのお楽しみですね。

ものすごくマニア向けの楽しみ方ですが、本屋さん店内の絵に書かれている本の元ネタを探すのは、好きな人にはたまらなく楽しそう。なんとなくタイトルがわかるので何冊かは確実にこの本だ!というのがわかりました。自分の作品もたくさん並べてらっしゃるみたいですが、一昨年出版されたこの本に、今年出版された本が並んでる気がするんだよなぁ、気になります。

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